働き方 be working 社労士に聞いてみよう―労働相談

労働問題は社会保険労務士に聞いてみよう―あるある労働相談 第1回目―

あるある労働相談では、労働問題のスペシャリストである社労士が、働くうえで出てくる様々な問題・疑問にお答えします。今回は特定社会保険労務士の資格を持つマイケル岡田先生に聞いてみました。 社会保険労務士(以下、社労士)は労務、労働保険、社会保険に関するスペシャリストです。社労士と聞くと、どうしても”企業の味方”というイメージをお持ちの方も少なくないと思いますが、各種労働問題(サービス残業、残業代未払、有給問題、セクハラ、パワハラ、嫌がらせ、名ばかり管理職、有期労働契約の雇い止め、派遣切り等)に対する相談を行っており、働く側(個人)にとっても心強い味方です。

Q 相談
上司から、勤務中の私用メールを注意されました。勤務中に私用メールをしてはいけないのでしょうか?

A 回答
まず、従業員は、勤務中に私用メールなどの「私事」ができるのでしょうか。結論としては、勤務中、従業員は「私事ができません」。 従業員は、契約によって、勤務時間中は、その労働力を会社に売渡した時間ですから、その時間中はその職務に専念する義務があります。上司の許可なく勝手に「私事」をすることはできません

勤務時間中の私用メールについても、
①送信者が文書を考えて作成する時間(=「職務に専念していない時間」となります)
②私用で会社の施設を使用する
という、2つの違反行為を行うことになります。 次のような判決も参考になります。

勤務時間中は、特別の事情のある場合を除き、従業員は「その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職務遂行のために用い職務のみに従事しなければならない」(昭和52.12.13最高裁決定 目黒電電局判決)。

勤務中の私用メールは、厳に慎みましょう。

Q 相談
退職することになりました。会社に未消化の年休を買い取ってもらえますか?

A回答
年次有給休暇、いわいる年休の趣旨は、働く従業員の心身の疲労の回復を図るためです。
年休を取らない従業員に対して金銭を与えても、年休を与えたことにはならないし、法律の趣旨にも反することになります。従って、年休の事前の買い上げは、違法とされています。しかし、次のような場合には違法性はないとされています。①退職により、権利が消滅する年休②2年の時効により、消滅した年休①②とも、消滅原因が働く従業員が権利を行使しなかったことによるので、会社はこのことに対して配慮義務はありません。当然ですが、①②とも年休を会社が買い取ることは、任意です。

Q 相談
会社を辞めたいと考えています。出すのは「退職届」か「退職願い」のどちらでしょうか。

A 回答
会社を辞める際に出す「退職届」と「退職願い」は、実務上、区別しないで用いられておりますが、まったく異なるものです。一般的には、トラブルを防止のため、会社の就業規則等に「退職届」を提出するのか、「退職願い」を提出するのか、規定されております。

「退職届」は、「●年●月●日をもって退職致します」と記載し、従業員から会社に対しての一方的な意思表示となります。他方「退職願い」は、「●年●月●日をもって退職いたしたく、ご承認をお願い致します」と記載し、従業員から会社に対しての合意解約の申し入れになります。どちらを使用するかは、会社の就業規則等によります。また、会社によっては就業規則等に「会社所定の様式で作成した退職届(退職願い)を提出しなければならない」と規定されていることを根拠に、任意の様式で作成した退職届(退職願い)を拒否する事例が見られます。

結論から言うと、就業規則等に「退職する際は、会社所定の様式で作成した退職届(退職願い)を提出しなければならない」などと規定されていたとしても、そのような規定は無視して、任意の様式で作成した退職届(退職願い)を提出すれば法律上問題なく退職することができます。なぜなら、従業員には法律で「退職の自由」が保障されているからです。

Q 相談
上司から「年休の申請は3日前までにすること」と言われました。申請期限の縛りがあるのでしょうか。

A 回答
今回の質問は、「年休の申請は、何日前までにしなければならないか」という相談です。年休の申請手続きについては、労働基準法に定めがありません。結論としては、「年休の申請は3日前までとする」とし、それ以降の年休申請は一切認めないということについては、労働基準法第39条が使用者の時季変更権を設けている趣旨からすれば、「問題がある」と言えます。というのは、会社にとっては、「事業の正常な運営を妨げる」客観的な事情があるか否かを判断できる最小限度の時間があれば足りると考えられます。この場合、最小限度の時間がどれくらい必要であるか否かは、会社の事情によっても異なるので、一概に断定することは困難です。一般的には、前日の所定終業時刻までに申出があれば会社として時季変更権の行使をするか否かの決定には足りる場合が多いのではないかと考えられます。

この記事を書いた人 マイケル岡田(本名 岡田裕之)

・「おかだFP社労士事務所」 代表(東京商工会議所会員)
・「㈱早稲田法務パートナーズ」 代表取締役社長
・特定社会保険労務士
・ファイナンシャルプランナー(FP)

冗談(ジョーダン)が好きなことから「マイケル」と名乗る。
埼玉県出身。慶応義塾大学卒業。大手通信企業を退職後、社会保険労務士として独立。これまで、公的機関の相談員として、8,400件以上の相談に対応。また、中小企業の人事・労務コンサルティングを行なうかたわら、商工会議所、社労士会、FP協会などのセミナー講師として活躍中。難しいことをやさしく解説する講師としても定評がある。
趣味はサイクリング、ランニング、ダイビング。

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相談員(マイケル岡田)がアドバイス。

メール okada-office@tokyo.eeyo.jp までご連絡ください。

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